構造見学会とは、「完成した建物だと見えなくなってしまう部分を見てもらうために、工務店や設計事務所が開催する建物の見学会」のことです。デザインや設計プランなどの見た目やこだわりを見てもらうのが、完成見学会だとすると、構造見学会は、住宅の耐震性や断熱性などの品質や性能を知ってもらうためのものになります。

　構造見学会が行われる建物は、一般的に、建築主から見学会を行う許可を受けた、建築中の住宅です。開催される場所や時期は、その建物の場所や建築のタイミングによって決まります。開催日としては、見学者が参加しやすい日曜日に行われることが多いでしょう。工事の工程で見ると、上棟後が終わり、屋根や柱、一部床などが組みあがったタイミングや、断熱材の施工中のタイミング、設備配管が完了したタイミングなどがあります。これらは、現場の状況や構造見学会で伝えたい内容により決まります。

　耐震性能や断熱性能など、住宅の「数値で表される性能」について、その素材や技術的な部分を目で見て確認することができます。具体的には、以下のような部分です。

　耐震性の重要な要素となる梁や柱のサイズ、柱同士の接合方法や筋交いの設置の状態などについて確認することができます。住宅会社によっては、免震や制震機能を採用している場合もあり、その場合には、その説明を受けることができるでしょう。また、シロアリ対策や床下の湿気対策など、構造材の耐久性に関する部分の施工方法についても確認することができます。

　見えない部分が特に重要な気密性能と断熱性能についても確認することができます。カタログだけでは分かりにくい特長のある工法を採用している場合であれば、特に現場でその説明を受けることで、より理解を深めることができるでしょう。ただし、構造見学会のタイミングによって、実際に施工されたものを見ることができる場合とそうでない場合があります。

　キッチンや洗面化粧台などの給排水設備配管は、長く住み続ける上では、メンテナンス性を考慮する必要があり、定期点検のしやすい配管ルートや作業スペースの確保などが必要です。また、将来どの程度のコストで取り替えが可能なのかも大きく変わってきます。構造見学会では、床下や壁の中を見ることができるので、床下スペースや接続箇所などについて、どこまで考慮されているかを知ることができます。

　構造見学会の内容は、一般の方にとっては、見るだけではよく分からないことが多いのが事実。それらの情報について、丁寧にわかりやすく説明してくれたり、複数の選択肢があることを提案してくれたりする会社であれば、その他のことについても、お客様のことを考えて対応してくれる可能性が高いと判断できます。また、見学会時の状況から、日々の現場管理や整理・清掃の様子をうかがい知ることもできるでしょう。

　工事中の建物の内部は、道具や部材置いてあったり、段差があったりして、危険がいっぱいですが、構造見学会時には、中を見て回りやすいように、住宅会社が、資材を整理整頓し、安全な状態に準備して行われます。それでも、足場の上を歩いたり、急な階段をのぼったりすることもあるので、説明スタッフの指示に従いながら、建物内を見ていくことになります。建物全体を見て回りながら、建物の技術的な特長については、すべて説明を行ってもらえます。また、大工さんやその他の職人さんが参加していて、その人柄を知ることができる場合もあります。

　完成後に隠れてしまう部分については、説明を受けて理解した場合と、そうでない場合とでは、費用への納得感が全く違います。その部分への理解が深くなるれば、単純な建築総額の比較ではなく、品質と価格のバランスという尺度で、住宅会社選びができるようになります。
また、住宅会社にとっても構造見学会は、数値だけでは理解が難しい住宅の性能や品質への地道なこだわりについて、現場で伝えることができる絶好の機会です。見えない部分にコストをしっかりかけている住宅会社であればあるほど、構造見学会に来てもらいたいと考えています。住宅の性能と品質について知る上で、構造見学会はとても大切な機会といえるでしょう。